【やってみた】「苔どこ?」作ろう
片桐仁さんの、ものづくりを自分の手で体験したい!
【材料】
揃うのに最も時間がかかった
ハイゴケ
11日待ち。
お店「質が良い時だけ仕入れる」こだわりよう。
片桐さんの作品『苔どこ?』は番組内では苔玉転じてテラリウムに仕上がりました。
わたしは苔玉として仕上げます。
【土づくり】
ケト土:赤玉土=2:8
まゆみ先生・談「パン生地をこねるように」
粒が粗く、まとまりません。
真上から体重をかけ掌根で圧しつぶしました。
【土団子作り】
はじめ、ぐんぐん水を吸う土。
なるほど水加減が難しい。
良い加減と評された、
つるのさんの照りを目指します。
このあと最悪のタイミングで団子が崩壊するなど、まだこの時は知るよしもなく…。
【ガジュマル根ほぐし】
気根の間に指を入れると、土がごっそりはずれてしまいました。
寄せ植え経験者だけど、ビックリ。
気根とは脚みたいなもので、
根は気根から生える細いヒゲっぽいもの。
【木に土団子を貼る】
ガジュマルの複雑な気根と根。
思うように貼れない。
垂直、難しい。
実は団子に水分が足りていない…!
【苔を貼る】
ここ大事。
カットは慎重に!
苔はシート状で販売されています。
4センチの厚みがあるので、
番組と同じように底を切りました。
起きました、
苔シートバラバラ事件。
もうひとつ大事。
貼り直し厳禁です。
繰り返します。
苔貼りは1度きり!
「包むように貼る」
「足りないところは足す」
それが可能なのはシート状だからです。
2度目以降はバラけます。
バラけたらどうするか。
一本一本植えるしかありません。
ちなみに底面には貼りません。
貼っても枯れてしまいます。
【糸を巻く】
「苔の先をよけるように巻く」
よけ切れずつぶした場所が気になり
やり直そうと糸を外して
大後悔。
またもや起きるバラバラ事件。
巻き直し禁止!
誰か教えてよねー。
更に作業場所が仇に。
落下した苔が作業台上で分離。
ハイゴケバラバラ事件起き過ぎ。
是非とも作業は台の上すれすれで!
しかも底面へ糸が食い込みまして、
土台の団子が崩壊しました。
原因は先ほど書いた、団子の水分不足。
団子作りからやり直し。
あぁーーー!!
【剪定】
ポイント
手袋着用。
素手では手肌が荒れてしまいます。
切った面から出る白い液体。
これが肌荒れを起こす元です。
番組では土貼り前に剪定していました。
切った枝は挿し木にして増やせます。
【鉢底石を敷く】
ゼオライトで代用します。
番組ではDAISOのオレンジ色使用?
ホームセンターで類似品を購入。
【ジオラマ用 人・馬を糊づけ】
1円玉と比べてこの小ささ。
グルー接着面の少なさ。
糊が乾いた頃合いを見て手を離した途端、
三方ヶ原の戦いの徳川軍の如く全フィギュアがバタバタと討ち死にします。
しかも「お母さん」ヒールの靴履いているんです。
接着面、つま先だけ。
ゼロ・グラヴィティ・ママ。
お馬さんは歩行中。
なので右前足と左後ろ足が短い。
再現度、高い。
ヨドバシドットコムで予約しました。
店頭で受け取れます。
今回はたった1日で店舗間在庫移動。
嬉しいサービスでした。
【人・馬 糊付け後】
作成時間正味3時間半。
失敗の許されない工程も多々ありました。
根気良さ、丁寧さ、手先の器用さが要求される作業でした。
ご本人作とは似ても似つかぬバッタもんです。片桐さんの発想力、美意識、技の繊細さ、空間把握能力は1日で備わるものではないと身に染みました。
【考察補足】
選ばれなかった者たち
なぜ選ばれなかったか?
若者、お年寄り、役割のハッキリしない人、犬、父息子、赤ちゃん
片桐さんの『苔どこ?』解説は
「たまたま付けたのがスーパーのレジ袋を下げていたので」
レジ袋から紡がれる「ここどこ?」の会話。
ひとりでも大勢でもなく若い恋人同士でもなく「お母さん」「お父さん」の2人。
片桐さんの社会観が垣間見られます。
この作品は商品として実際販売されてTwitter利用者の手に渡ったようですが、どんな人がこれを手にしても皆、お父さんとお母さんから産まれていますから、誰にとっても最も想像しやすい存在を配置したと考える事ができます。
また、日常から逸脱した世界に迷わせたのがご自身より歳上でも歳下でもないミドルエイジカップルである事に優しさを感じるのは私だけでしょうか?
ベビーカーの赤ちゃんや手押し車を押すお年寄り、犬や子連れの若者が迷子になっていたら心配だし、不安になってしまいます。
『千と千尋の神隠し』で子どもより先立って異世界に迷い込み豚に変えられてしまったのも、中年夫婦でした。
彼らは経験と知恵と体力を備えた存在であるため、迷子になる可能性は低いのです。
そこに不条理な物語性があるわけです。
馬はどう解釈しましょう。
元々此処に居たのか?
カップルと共に来たのか?
大元のテーマは『宇宙』です。
わたしは、ノアの箱舟と同じく人と馬が一緒に連れて来られたのではないかと、そして馬は動物たちの代表で、雄と雌ではないかと想像しました。
本来、馬は群れで行動しますが、この『宇宙』では2頭の馬が木の幹を挟んで、出会いそうで出会わない立ち位置に置かれています。
もしかすると目的地で2頭も会うのかもしれませんが、今居る場所からは、夫婦が対で下へ向かうのに対し、馬はそれぞれの意思で別々の道を行こうとしているのです。
この3方向のベクトルから分かることは、異世界においても移動前と生態を同じくしている事。そしてヒトと動物を区別して生かしている事です。
描かれているのは、馬は本能に従って、人は思考して協働するという違いです。
SF作家のRobert A. Heinlein(ロバート・A・ハインライン)がこんな言葉を遺しています。
Love is the condition in which the happiness of another person is essential to your own.
愛というのは要するに、自分以外のもう一人の人間の幸福が、自分自身の幸福にとって絶対的に必須欠くべからざるものであるという状態である。
このカップルからはそんな愛が感じられます。
1対の馬との対比で、男女の関係性がより強調されるのです。
一緒に買い物に出かけた設定が既に仲の良さを伺わせます。
迷い込んだ世界で吾れ先に歩くのが「ちょっと遠回りして帰ろうよ」と提案した「お父さん」ではなく、それに付き合った「お母さん」であること。
更に、「お父さん」の遠回りの自由を許していて、提案に付き合う「お母さん」の歩み寄り。
迷い込んだ世界でもお互いの必要性を認識する展開が推測されます。
【感想】
片桐さんがキューブ鉢を選んだのにはこだわりがあったのでしょう。
作りにくい。
管理しにくい。
狭い所に手を突っ込んで。
手の汚れがガラスに着くは窮屈だは。
底穴が無いから水と空気が抜けない。
霧吹きする度、鉢が汚れる。
お皿に載せるほうがずっとラク。
では何故、この鉢を選んだのか?
究極の結論が出ました。
どんなに困難でも頭の中にある世界を表現する事に妥協しないから。
俳優業では制作サイドが創造主です。
役という彼らの要求する枠にご自身を素材として変化させ、はめ込みます。
彫刻家としては逆です。
片桐さんが神です。
盛ったり削いだりして片桐さんの頭の中にあるものを限られた材料に表現させます。
この真逆の立場を行き来する中で培われた片桐さんのマインドからは、お手軽な方で代用しようとか、売り物にする企画だから手に取り易い作品にする事が最優先だとか、短時間で仕上げてロケを早く終わらせようとか、実用的に、リーズナブルに、一般ウケを狙って、という選択肢は除外されるのでしょう。
ひとえに心の声に忠実に。
片桐仁さんの本質の一面ではないでしょうか。
片桐さんはご自身が作った粘土アートの個展を開催しています。その世界観に惹かれる人の数はうなぎ昇りです。
時にご家族をはじめ、ほかの人からアイディアを貰って手がける事もある作品の数々は、どなたの発想でも、実在する生物をかたどっていても、彼の脳内世界を通過する事で生々しく面妖奇天烈に仕上がります。
立方体のふちに腰かけ、片桐さんの脳内を覗こうとして苔を敷き詰めたガラスキューブの中には、行けども行けども無限に広がる宇宙の入り口がありました。
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210日後(5月ゴールデンウィーク明け)
苔玉を作り直し、挿し木を育てています。
泥団子を固める時は、初め水を少なく、全体のバランスを見ながら少しずつ土を貼り付け、その際に土を貼りたい場所に霧吹きで水を付けて土を足すとうまくいきました。
手入れですが、室内の陽当たりの良い場所で時々葉を取るくらい。冬でも20℃くらい。とはいえ冬はあまり葉が成長しませんでした。桜の咲く頃、回復しました。
苔玉の土がかなり流れてしまい原形を留めなくなってしまいました。初めのうち水やりは「軽くなったら水にドボンと漬け」ていましたが土の溶け出しが気になり次第に細口のジョウロでまんべんなく湿らせるやり方にシフトしました。多い時は1日3回ほど。また、葉水も欠かさないようにしました。
初回に苔玉に付けた苔は今後、別の場所に移して養生します。
今回貼り付けた苔は初回に余った分を養生しておいたもので、養生を始めておよそ半年くらいで元気になった記憶があります。
その養生法ですが穴の空いていないプラスチック製の平たい器に、くっ付いていた土ごとばら撒いて半日陰に置きっ放し、他の植木と同じタイミングで水やりをしただけで、栄養剤はあげませんでしたが見事に再生しました。
穴が無いので雨水がたまって池のようになってしまう日もあったり枯れ果てたような色だった日もありましたが、綺麗な緑に育ち、このように新しい苔玉に馴染んでくれました。
フィギュアですが、4回くらい剥がれては糊付けを繰り返しています。
今後の課題は挿し木の気根を太く育てられるかどうか。目下奮闘中です。