お話の森2019年8月4日 3/7 『つきよのかいじゅう』
ネッシー見たことありますか?
湖にひっそりと暮らしているらしく、世界中で、いた!だの、いない!だのと議論になる、謎の巨大生物です。
このお話は、湖からひょっこり覗く不思議な生き物と、それをテントから観察する男の心の声の掛け合い。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「やまぼう」だったゲルの赤い布を取り去り現れた骨組みに白っぽい布をかけようとしています。
片桐さんが入るには小さ過ぎる骨組みも、ひとりで布で覆うにはちょっと大きくて一発では無理みたい。
何度布を広げて被せても、どこか開いてしまう。
これじゃあテントが仕上がらない。
部分的に被さらないと
そこ!
そっち!
あいてる!
指差して教えてあげようと高い声が会場じゅうに満ちるので、片桐さんははだしの足で急いで指さされた方向へペタペタ走って行って布を掛け直します。
わざと不完全なテントを作っては子どもたちにそこだあそこだと教えられ、汗ぐっしょり。
そのステージと子どもたちの真剣な様子を見て大人がくすくすくすくす。
「これは、なんでしょうか?」
おにぎりー!!
いしー!!
いわー!!
テントーーー!!
「そう!正解!テント!!」
テントのてっぺんへお尻をズボッと突っ込み、お顔と本とひざ下だけ飛び出させ、ぷら〜んと垂らしたスネはいたずらっ子のよう。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
何日も何日も湖から飛び出した何者かを観察する男。
スクリーンの中でお月さまが形を変えていきます。
飛び出したそれは少しずつ正体を現します。
なんと!湖から飛び出した謎の生き物は巨大なヒトの足でした。
「えぇ〜〜〜っ?!」
ふくらはぎからつま先までを真っ逆さまに池に突き刺したかのように片方だけ。
時間が経つにつれまるで八つ墓村のように両脚、膝まで出して。湖の中はどうなっているのかしら?
絵本の中で太鼓の音で踊るふくらはぎ。足拍子も始まります。
「ボコボコボコボコボコボコ、ボン」
リズムに合わせて踊る片桐さんのふくらはぎ。
右へ左へ。上へ下へ。
「ボコボコボコボコボコボコ、ボン」
片桐さんの上手な足拍子と一緒に会場の全員の手拍子がピタリと合います。ゆったりとした鈍い一定のリズムが続きます。逆さまで見るとヒトのふくらはぎってネッシーの首みたいですね。見ているうちに足だか手だか、はたまた不思議な巨大生物だか分からなくなりそうです。
水の抵抗があるからなのか、ちょっと重ったるいそのリズムに合わせ、もしかするとテントから観察していた本の中の男も、一緒にリズムを取ったかもしれません。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ぼくは ネッシーみたいな かいじゅうを まっているんだ」
おわり。
「そんなにつまらなさそうにするぅ〜?!」おしまいのページで絵本の中の男に素っ頓狂にツッコんでおられた片桐さんはUFOを見たことがあるのでしたっけ。
もしもこの目撃者が片桐さんだったら、目を丸くして面白がってみんなに教えてくれそうですね。