2023年5月10日(水)18:30アートに会おう、遊ぼう、自分を楽しもう
慶應大学の特別講座です。オンラインで受講しました。
始まって1時間くらいでラーメンズって言葉が出ましたよ。
そうでした。ラーメンズの片桐仁さんでした。おかえり、片桐さん。
ちょこっと画面に映ったお客さんのほぼ全員会社員感。白いワイシャツ、ダークズボン。おお、丸の内。
ゴールデンウィーク明け、新型コロナ禍からの夜明け。
はじまり、はじまり。
「会社帰りなんですか?美術館、行きます?いないでしょう?…あ、いるんですね結構。いないってていでこんなタイトルで準備して来たんですけども。じゃ、演劇はどうでしょう?…演劇も、行くんですね…」
アートって何だろう。
ゼロが沢山つくような金額で売られたゴッホに波のように群衆が押し寄せること?
「江戸時代の広い敷地にそのままドーンと美術館を建てた良い気の上野」に行く休日のリフレッシュ?
それとも…
「美術館に行って皆さん何します?一歩目にその展覧会の『ごあいさつ』がある。それを立ち止まって読む。
入場したかと思ったら作品の隣のキャプションを読む。読んでから作品を観る。で、読んだことを考える。頭で。
全部頭なんです。
情報を入れに行っている。
粘土はどうか。手になんか感触がします。手から脳に信号が伝わる。気持ちいい。ワークショップでお年寄りから子供まで幅広く触ってもらう。手に取る。すると何かが出来上がっている。
粘土ってそうなんです」
そして、ご自身の経歴。
作品を紹介。
本日、おすすめする美術館
「大塚国際美術館。ぜんぶ偽物。さわれるアート。触ってください。
馬高縄文館。火焔土器を作るワークショップがある。参加しました。全員にやって欲しい。全員に。
あとなんだっけ、(マネジャーに助け舟もらう)つがる市縄文住居展示資料館(カルコ)。」
観る、作る、触る…
パジコさんの白のハーティ粘土(大)が配られる。
「ちょっとちぎって回してください、後ろの人に。パンみたいに。」
学校っぽい。
一番絵の机に座っていた人は片桐さんの手から直接粘土が渡される。
ますます学校っぽい。
そうだ、学校だ。慶應大学だ。
片桐さんは三原色も持っている。こねて、混ぜ始める。
「皆さんの分はないです。色のやつ、やりたいでしょう?やるとワークショップになっちゃうから(今日は配らないです)」
やってみる。できるかな?
奇しくも今日、報道発表としては高見のっぽさんの訃報が流れた。
やってみることって、アートの始まりかもしれない。
それにしても、文字に起こすと、どうしてもつまらなく見えてしまってもどかしい。
だってオンラインでも、面白い。
その場に行かなくて、悔しい。
ちょっとオシャレして、サラリーマンか何かのふりして、行きたかった、丸の内。
三菱一号館の煉瓦前に座ってクロワッサンでも手にして、最盛期のバラでも見ながら、そろそろ慶応の講座の時間かなんてトレンチコートの裾でもぱっぱっとはたきたかった。ああ、悔しい。
慶応のフリをしたいワセダニアンなのだ。わたしは。ちぇっ。
閑話休題。
粘土触ってからよりお話が面白くなるの片桐さんやっぱりアーティストだなぁと思います。
粘土前はしきりに「なんだろうなぁ、」と考えながら思い出しながら会場の様子みながらお話ししていました。
そういえばコロナ禍で、トークイベント的なものは3年ぶりくらい。慶應大学の特別講座in丸の内。コロナ明け(?)としてはかなりカタイ場。
友達で仏師の三浦さんが早稲田大学卒である話を2度して。
「だめですかこういう話(笑)」
k大でw大の話をするとちょっとムッとこられるのをよくご存知です(笑)。予定調和。
本日の名言
「やったことのないことをやることは楽しい」
質問者1人目。質問者が立った瞬間。質問が出るより前に素早く「何言ってるか分かりました?すみません」って謝る片桐さん。まだまだ、質問一言も始まっていませんよ〜。
どういう気持ちでアートを作っていますか?「〆切です」即答(笑)それは片桐さんの話であって、
「作り続けなきゃ死んじゃう人しかやってない。理由がわからない、わかんないとご本人が言う。どう見るかは皆さんの自由。その時の体調とかによってビビッとくるものは違う。会期の前と後半では、散々(前半に)2周くらいしたのに(後半でこんな作品あったっけというくらい)刺さったりする。」
「作る人はそんな考えてないんじゃないか。キャプション書く人は本人じゃ無い。何なら本人は死んじゃってたりするのに他人が書く。」
オンラインより2人目。宇都宮さんからの質問ですとの司会に「TMネットワークか?」同グループの名曲にちなみここ2年ほどSNSで「GetWild退社」がトレンドに上がることも。片桐さんは同世代。丸の内って「GetWild退社」にイメージがピッタリの場所だ。
回答。「観る人によって受け取るもの、感じることは違うから作ったらもう知らない。反応は色々。自分の評価と人の評価は違うから、もう知らない。」
3人目。普段どんなことからインスピレーション?「普段美術館などからモチベーションもらっていることが多い。デイヴィッド・リンチとか好きでしょって言われるけど、直接真似したいと思うけれど、ウドンケンシュタイン、ウルトラ怪獣もそうだけど当たり前が当たり前じゃなくなる瞬間がある。」
「リ××××?(聴き取れなかったですすみません)というアーティストが好き。作品の(?)花を持って帰って良い。ただし帰りは来たのと別の道で帰り誰かにプレゼントしてください。と言われる。どうしよう、誰に渡そう、お年寄りだったらイケるかなぁと思いながら渡さずに帰ってしまった。日本人は、じゃあ要らないと返してしまうらしい。渡していたら何かが変わっていただろう。」
4人目。今回のタイトルの副題、自分を楽しもう、に言葉を付け加えてほしい。「これは(人に)考えてもらったんでじゃあそれで!って。一度きりの人生だし楽しい方がいい、アートをきっかけに自分を再発見みたいな。僕はラジオの仕事をしている。やな目にあったときに(嫌だなぁと思うけれど)ラジオで喋れると楽しい。」
「日常の中の違和感。自分だけがこれ気付いているのかな?が作品として認めてもらうほどでなくてもあの壁が顔に見える、なんて気持ちが自分を楽しめる。へき。癖。たいがーりーは家の鍵を閉めた直後ノブをガチャガチャする。8回確認する。鍵閉め8回はやがて9回になり10回を超えてドアノブを壊した。マイルールも才能。」
「一歩引いたところから見たら笑ってもらえたり笑われちゃってるとしても楽しんでもらえたら自分も楽しい。これはウケるぞと思いながら作っていて反復作業していたら左右比較して一回り大きくできちゃってこっちの手はパーにしようってなる。」
5人目、ラーメンズを観てパフォーマーになった方からの質問。マイルールは?「あんまこうだって決めつけない。けどそれは役者だからでパフォーマーだったら違うだろう。共演者とのやりとりとか瞬間を大事にしようとは思っている。(質問者に職種を尋ねて)マジシャンなんですか?!うちも相方マジシャンでマジックの事務所やめてうちの事務所入りましたからね。」
6人目、オンバト観てました、の方の質問。新しいこと始める時どんな気持ちで?「今日もまさにそう。横尾忠則さんの「受け身のポジティブ」。失敗や評価下がったらと自分を支配するネガティブな気持ちもあるがやらなければ何も変わらない。僕は自分からってことはほぼない。誰かに言われたり誰かに助けられて今の自分を捨てずにやっている。転職とか、大変ですよね…僕、職に就いたこと一度もないですけど。全部捨てて全部始めるんですから大変ですよねきっと」
「質問していただくと僕もいろいろ思い出して助かります」
7人目オンラインよりひとつ目の質問。ペンネームは恐らく片桐さんのアートイベント常連の方。今日のブローチのテーマは?「アゲハの幼虫、黄金虫、クモ。遊ぼう、というテーマに探検隊のアウトドア、遊ぼう感のシャツ。いつもお世話になっているスタイリストさんがいっぱい持ってきてくれるブローチ。(オリーブグリーンのツートン?シャツジャケットの中に、蝶ネクタイの付いたシャツ)服はスタイリストさんから買った服。」
7人目のふたつ目質問。美術館の見方のアドバイスを。「そこで会う人には一生会わないので。(周囲が整然と並んで陳列順に歩く)リズムに(自分の歩調を)合わすより、順路通り見る必要はないが、キュレーターの想いがこもっているので順番通りに見るのも音声ガイドももちろんいいが…絵と絵の間に隙間ができる。そこはみんな早く行きたい。(みんなそこを)素通りする。で、そこへスッと(斜めから)入れる。」
「フェルメールはちっちゃい絵ですごく混んでる。観るとギュンと引っ張られる。呪い。なんなんでしょうあれは。隙間からこうー入っていく。舌打ちはされますけどね、こうースッと入る。これがコツです。ダメですかねぇ?」
(それはわたしも行っていたのでちょっと嬉しい。ダメですかねぇ?舌打ちは悔しさの証拠だ…聴こえない、知らない…今後もスッと入ろう。)
8人目。「思春期で見たやつは情報がない。油絵に関してはでこぼこ具合とか本物を見ないとわからない。なんとかものにしようと観る。日展か動物園か高校の友達小林くんという人と見に行く。入場してたっぷり3時間くらい見てあーっ!疲れた!って。角を曲がったら『ここからは油絵です』と書いてある(!)。日本画だけで3時間だった。(もう真剣に見過ぎで疲れて無理だ!)帰ろう、って。」
9人目。すごい作品数。どこに保管?「倉庫です。什器が借りるとめちゃくちゃ高い。ギリ展の什器は自分で作った。中に引き出しあり作品が入る。これごと倉庫にしまってある。これで台湾も行った。赤い台湾用ペットボ土偶は売れなかった。作品売ってないから価値がないと言われた。本物は20年前のはもう壊れている。」
「少数ロットで、cowsさんみたいにソフビで売りたい。本物は壊れやすくて売るのが大変で。鯛フォンも複製したのをあげるけどヒレが痛いし落としたら怖いから使いづらいと言われる。」
10人目。お子さんとアートとの接点は?「これは難しいんですよね。上手い絵描いたら美大には入れるけど楽しく描いてほしい。うまい描き方を言わないようにしたい。でも言ってしまう。それを次男は嫌がる。うまいことさせようとするとうまくいかない。僕もそうやってきた。」
11人目。プラモはなぜ好きですか?「子供の頃ガンプラブーム。超合金は幼稚園時代。プラモが尊い理由は自分で作るから。僕は雑。根っこが雑で自分の雑さとの戦いがある。手数をやると評価してもらえる。細かいと喜んでもらえる。プラモのプロを目指してけどマックスさんがシャーザクの色塗りでこの赤はただの赤ではないという。
ピンクとオレンジの間だと。下塗りした蛍光ピンクが滲み上がる瞬間を待ってる。と言われすごい目をもった職人の世界で僕にはできないと思った。」
12人目。チョキはなぜ指6本か?「よく気付きました。買ったら翌日誕生日プレゼントでもらって。チェキって縦長。気づいたら6本になってた。小指の付け根の膨らみを出すために気づいたら6本になっていたというのが楽しい。頭で考えることではない。触ってたらこうなってた」
13人目。会心の一撃は?「公園魔。自分1人でやらなければとの気持ちが人と好みが違うし全部こうしろと言うのは面倒と思った。だけどお祭みたいにみんなでワーワーやれたのはすごい面白かった。息子が途中で飽きてやめたりコントロールできないけど楽しかった。」「これ最後どうすんだ問題。公園に置けなかった。発泡なので粉々にできると言われたが寂しくて母校のマエハラ中学の教室に置いてあり、分解して組み立てることができる。」
14人目。セリフをどう覚える?工夫?「ラーメンズの頃は3回くらいで覚えられたのに今全然覚えられない。今時代劇やってて全然違うセリフ言ってて口から。僕だけわかってなくて間違ってましたか?って自分で聞くくらい。皆、書く、音読する、或る落語家さんは目黒からレインボーブリッジまで歩きながら。自分もやったら途中捻挫した。」
「か行さ行た行ら行が苦手。それがなければ。二十文字なら行ける。僕がやっているのは、録音するんです。それを聴いて何言ってるかわからないところだけ練習する。(今時代劇やってて京都で撮影していて)京都弁習ったりとか大変。移動中とか、ゾーンに入った!ヨシヨシ(これは覚えたぞ)と思ってると現場で覚えられていない。」
「カンペとか最高です。カンペでも昭和の俳優さん最高。袴田吉彦さんはほんとご自身でもカンペ上手いよって言ってる。カンペも、目線問題とかあって。」
「ラーメンズのとき映像記憶で。ぼく凄かったんですよ。ホントに凄かった。相方自分で書いてるので自分でアレンジするんだけど僕はロボットみたいな。アレンジされるとパニックになるんです、脳が。」
「質問ありがとうございました。ホント皆さん、気を遣ってくださって。」
質問コーナー終了。
「さっきは話すことを箇条書きにしてきたのを持ってきて話したんだけど、思いついた話すると戻ってこれなくて袋小路に入っちゃう。合計で8時間くらい会議やって来たんだけど。大丈夫でしたか皆さん。僕話出して話終わってない話ありませんでしたか?そんなのばっかりだったかもしれないですけど。」
「文具アート展が八月に横浜に巡回します。普通に描いた方が早いよね、なんで?って思う作品揃いですけど、是非是非おすすめです。」
相方は、誰も着座しない会場の世界的競技大会でその闇を切り拓かんとした。
片桐さんは、新型コロナの五類落としを機に登壇した。
勇気の要ることだ。
形は違えどパフォーマンスや笑いで、もう一度世界を仕切り直す。
どうすることも出来ないこの宇宙の仕組みの中でも、何度でも舞台を、始めてくれる。
やっぱり世界は面白かったと思わせてくれる。
だから、私たちはまた、足を運ぶんだ。
アートに会おう、遊ぼう、自分を楽しもう。