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お話の森2019年8月4日 1/7『やまぼう』

大人と子供のための読み聞かせ、「お話の森」は昨年初めてシアタートラムで行われた夏休みのイベントです。

 

昨年同様、二部制で土曜日はローリー寺西さんが、日曜日は片桐仁さんがご担当。

本稿は日曜日の昼と夕の部を観覧して感想文を記したものです。

 

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さぁ開演です。馬喰町バンドの演奏で幕を開けると、どこからともなく片桐さんの声が聞こえてきました。もう、本を読み始めていますよ。

 


片桐さんは一体どこにいるのかな?

 


客席の子どもたちは舞台の上のひょろりと立った木の向こうを覗いてみたり、後ろを振り返ったりしますが、姿は全く見えません。

 


昨年のお話の森の最後の一冊は「森のかくれんぼう」でした。

舞台の森にたくさんの絵本と動物たちを隠して、どこにいるかをお客さんに答えてもらう仕掛けでしたが、今年の始まりはどうやら読み手ご当人さまが「かくれんぼう」です。

 


読み始めた本の1ページ目がスクリーンに映し出されています。

3人の子供と、青い空、大きなお山にはおめめとくちがついています。このお山はみんなとおしゃべりできるのですって。

 


『やまぼう』です。

 

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片桐さんが演じる、この世のものではない生き物の声は絶妙です。

こんな、のっそりとした気立ての好い山が喋るなら、きっとこんな感じだろうという声で子供の呼びかけに答えます。

 


まさに「やまぼう」が答える瞬間でした!

舞台に置かれたゲルの端。

パカっと割れて…

 


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やおら登場しようとのアイディアを打ち合わせで切り出したところ、こうするしかないですよとスタッフに諭されて、それが過酷な環境ながら諦めることなく実行してしまった片桐さん。

 


舞台中央上手寄り。

数枚の布をざっくりと合わせて骨組みの上にかぶせただけの簡易ゲル。

布の間が割れて突如顔だけニュッ!!飛び出しました!

 

いつもよりくるくるふわふわボリュームたっぷりにカールさせた髪は分け目を失い、お顔の2倍くらいのボリュームにふくらんでいます。そのせいで山に植わった木の一部のように見えます。「やまぼう」そっくりではないですか!

この仕掛けで見事お話の森は大人と子どもの爆発的な笑いに包まれ始まりました。

 


片桐さんが隠れていたゲルは高さも直径も2メートルあるかどうか。

せり上がりを利用したのだと思いきや、なんと開演30分間も(!)大きな身体を小さく丸めてその中に座り込み、照明に照らされ蒸し煮状態。

あれまぁ、片桐さんって閉所恐怖でエレベーターでもお好きではないって、どこかで仰っていましたよね?

34℃、酷暑日の最も暑い13時。そんな密閉空間から本を読み始めるなんて若手芸人がやることですよ!

片桐さんはベテランなのでフリスク食べながらスマホゲームしがらドームの中でじっとしていたそうです。

「少しでも動いたらここに居るってバレちゃうから!」

その結果、登場までに玉の汗をたくさん光らせ、足を痺れさせてしまうのです。

 


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子供たちと一緒に海に行きたい「やまぼう」は、子供たちに歩き方を教えてもらいます。

 


歩けるわけ、ないじゃん!山だもん!

 


客席からツッコミを入れていた男の子も、

 

「せーの!」「ずり」「ずり、ずり、ずり」

 

と「片桐やまぼう」がドラムスの音と一緒に大迫力でゲルごと不器用そうに移動し始めると、口を大きく開けて笑いながら、もう夢中!!

 


見る見る間にどんどん客席に近づいてきますよ!

怖いような可笑しいような。だけれどみんな椅子から動けません。

 

「ずり、ずり、」

 


きゃぁ!

 


どこまでこっちに来るんだろう!

 

「ずずずずず」!!

 


わぁ!

また来た!

 


またまた近づいて来たよ!

舞台の端っこ、すぐそばまで来て

 

 

「ざっぱーん。」!!

「ひゃぁ!つめたい!」

 

 

「やまぼう」が波打ち際までたどり着いた瞬間、シンバルも鳴りました。

肩をすくめて目が離せないでいる最前列の女の子。

 


みんなで海に行くことができて、初めての海を満足そうに楽しむ「やまぼう」でした。

 


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読み終えて木の下に向かうとエビアンをぐいっと飲んで汗を拭きます。

拭いても拭いても吹き出す汗に

「止まらなぁい!」

メガネを外してメガネを拭くも、

「拭いた布が汗だくだったぁ〜」

余計にメガネがびしょびしょに。片桐さん、着た服で拭くからですよ。

 


「暑いですね…僕だけですか?」

 


3枚着ています。Tシャツの上にTシャツ、更にボタン付きのシャツを!しかもさっきまでドームに密閉されていましたよね…。

 


今年は長梅雨で涼しく長い梅雨でした。今日も雨、昨日も明日も雨、カラッとしない長い初夏。明けた途端

 


「晴れたぁ!!…と思ったけど1日で飽きましたね?!」

 


どっとウケたりして。お天気の話、しただけなのに。

 


「今日は開演してすぐ本を読み始めました。去年僕が扉からどーもー!って登場したら、しーんとしてしまって…それがイヤだったので」

 


ケラケラ、遠慮なく笑ってしまうお客さんたちの、どのくらいが去年も来場した人なのでしょう。

 

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