3/8 【破顔神楽の虫談義】片桐仁×小松貴「昆虫愛!」 『昆虫学者はやめられない―裏山の奇人、徘徊の記』(小松貴著)刊行記念トークイベントに寄せて
これから投影される画像の中にどんな昆虫が居るか、小松貴さんが出題し片桐仁さんが答えるクイズ形式から始めましょう。そう主催者がアナウンスしてマイクがお二人の手に委ねられました。
そして映されるやいなや何故か現れる、蚊の画像。
ん?…うん、クイズにするまでもなく見紛う事なき蚊ですね。見たことない種類ですけれど。
えーと?
昆虫を探せクイズじゃなかったのでしたっけ?丸分かりですよ?こんな簡単な問題出しますか?
小松貴さんの天然ミスチョイスか、狙ったボケか。
いずれにしてもこのトークイベントはライブ感たっぷりの面白いものになりそうです。
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仕切り直して画面は…白黒の砂嵐?
数秒置いてぼんやりと把握できる…これは…虫!
白と黒の…アリジゴク?
あ、右にも、上にも。
どうやらこの白黒は崖に繁茂する地衣類で、その中に小松貴さんも把握できないほどの数のゴマダラウスバカゲロウの幼虫が居るようなのです。
片桐仁さんは、見つけ始めると虫ではないものも虫に見えてくる目の錯覚を伝えながら検数に挑戦し、その驚くべき生態の解明について質問を投げかけます。
このゴマダラウスバカゲロウの幼虫、口を可動域いっぱいに開けたまま岩場にしがみ付き近寄る虫を捕食します。
そして一度定住するとなんと半年動かなくても平気なのだそう。
帰宅後調べますと、そのために昔は水だけ吸って何も食べずに生きていると思われていたようです。
成虫化するまでの期間を片桐仁さんが尋ねると、上手に捕食できれば育ちも早いが三年のものも居るとのお答。正に石の上にも三年。
見つけた場所は、日当たりの無い足元の悪い崖。
その回答に片桐仁さんがよくぞこんなに見難いものそんな場所へ赴きカメラを構える気になるとでも言いたそうに失笑します。
そこで初めて会場から共感の笑い声がこぼれ出すのでした。
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虫たちは越冬を、姿を丸い殻に覆われるか幼虫の姿で行うかと思われがちですが、投影されたトンボは成虫のトンボの形のまま冬を越す種(しゅ)。
片桐仁さん曰く「全足で」枝を掴んで冬眠します。
枯野の中から見つけ出すのには冬三巡かかり、「浪人ですね」「三浪!」。
それを受け小松貴さんからは” 蜻蛉浪人 ”との名言まで飛び出す始末に思わず吹き出す客席。
トークイベントに伺うと時折こうした片桐語録とも呼べる、端的で的確な名言が繰り出され、そのインパクトが強烈に語りに華を添えます。