6/9【かたぎりくんのせんそうごっこ】世田谷パブリックシアター シアタートラム お話の森2018年8月5日に寄せて
今までと同じようにみんなは片桐さんに、落ち葉の中を指し示して絵本を探してもらおうとします。でも
「ここ?」
ひざをついて葉っぱの山をかきわけかきわけ、真顔でさがしても出てきません。
あっちー!
「こっち?これかなー?」
それー!
「ざんねんでした、これはレジャーシートでした」
みんな、がんばれ!
客席からは口々にあそこだここだと声がとび交い、まるで真夏のせみしぐれ。片桐さんは
「なにいってるかわかんねー」
うれしそうに困ります。
“お野菜ステーション”で育った“にんじん娘”の“キャロライン”が“ペットのハッパ”と、のどかにお散歩していると、ほんの3ページ目でキャロラインの仲間にひどい事件がいっぱい起きています。
「なにこの展開」
片桐さんがすかさずツッコミます。絵のすべてが粘土だから残酷には写りませんが、子どもむけの絵本にしてはあまりにもナンセンスで大人は早くも大爆笑です。
「お野菜戦争」は片桐さんのお友だちでもあるデハラユキノリさんの粘土作品による写真絵本です。
権力者の都合で行く末をふりまわされるお野菜たち。冒険ものがたりのはじまり、はじまり。
さぁここから片桐さんの、お野菜戦争ごっこもスタートです!
ぶたぶたくんの買った“いちばんの かおつきぱんの じょうとうぱん”は数日前に片桐さんが次男くんといっしょにこねて焼いたものでしたが、この絵本を読むときには悪者の巨人“みどりジャイアント”に変身です。
芝生のまんなかにレジャーシートを広げあぐらで座った片桐さんは、脚の上の絵本を読み進めながら右手に巨人を、左手にお野菜たちをかかえては次々とぶつけ合わせます。悪役とヒーローのフィギュアを戦わせるように。
そのようすは客席でいい子で聴き入っているお友だちの誰よりも子どもの遊びらしく活発でした。
昼の部では、大きな口をあんぐり開けて小さく緑の巨人をかじってやりました。
「パッサパサ」
と、ぼやいて。
夕の部では昼よりちょっと多めににんじんをがぶり、ポリポリ…。のみこみにくそうに。あらら。おはなしが先にすすまず、小さなお客さんがやきもきしていますよ。
「つかったしょくざいは、のちほどおいしくいただきます」
この本のほとんどを叫ぶように読み切った片桐さん、子どものころは
「ぼくも、やさいきらいでした」
二十歳くらいの頃お金がなくて、ごはんを食べずにやり過ごし、さすがに「たべなきゃしんじゃう!」と食卓についたところ、「なんでもおいしい!」と感激ひとしおだったとか。
だからって、きらいな野菜をどうにか子どもに食べてもらう秘訣は、
「たべささなきゃいいです」
爆弾発言?!
「ふつかくらい」
この頃には片桐さんがなにをお話ししても大人はげらげら笑ってしまうし、子どもはお話よりご本が待ち遠しくなってしまっていました。