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14/14【終わりに】銀座 蔦屋書店 トークイベント運慶展に寄せて

お客さんに寄り添い、講師との間に立ち、どの立場のかたにも手を差し伸べ、時に運慶が乗り移ったかのように、時にただもうご自身が夢中で仕方ないように、この一時間半、何役こなされたことでしょう。

専門解説だけじゃ敷居高いし法話だけじゃお寺で聴いたほうが良いし。
大事なのは言いにくいことを誰が言うか、中継ぎをするか。

此処に参じたお客さんの大方は黙って聴いて理知的にお勉強するスタンスだったはずなのに、あれよあれよと言う間に片桐仁さんの感嘆に心の声が解放されてしまって心地好さに浮かされている。

大人になると、力を抜くこと、気楽に楽しむことを忘れることがあります。
本心では面白いものを求めているのに、日々の忙しさにかまけて美術品たちから足が遠のくこともあります。

でもこうして片桐仁さんの提案する楽しみかたで博物館に赴くと、こんなに気楽に感動できるのだと気付きます。心が潤って日常がちょっと変化したり、誰かと分かち合いたくなったり。

西木政統さんは知識を、辻明俊さんは運慶の時代に生きた人の生きざまを、片桐仁さんは楽しみかたを惜しみなく教えてくださいました。

“どんな小さなものでも みつめていると 宇宙につながっている―詩人まど・みちお 100歳の言葉”の中で、まど・みちおさんは、驚き面白がる感性は年齢に関係なく、不思議そうに近付いては愛情を感じ言葉にせずにはいられない。というようなことをお書きになっています。

その瑞々しい感性は片桐仁さんにも共通するように思えました。