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3/14【登場編】銀座 蔦屋書店 トークイベント運慶展に寄せて

GINZA SIX中央吹き抜けは草間彌生さんの新作インスタレーションを2/25(日)まで展示中。
その6階。銀座 蔦屋書店さんは本を介してアートと日本文化と暮らしをつなぎ、“アートのある暮らし”を提案しています。

 

 

 

銀座 蔦屋書店さんの簡単なご紹介の後、お三方入場。

•西木政統(にしきまさのり)さん、メイン講師。ノートパソコンを側に。運慶展企画者で東京国立博物館研究員。

パソコンを投影した中型のスクリーンを挟み
•ゲスト、片桐仁(かたぎりじん)さん。
•お隣、辻明俊(つじみょうしゅん)さん、興福寺執事。

 


彫刻展示、ショービジネス、法話、それぞれのプロフェッショナルが集結。

四方を本棚が囲み、電球色の灯りに満たされた箱の底、静かにみなぎる高揚感と緊張感。


スクリーンには無数の画像が格納されたPCフォルダ。パワーポイントだろうかプレゼンソフトのウィンドウと見て取れる。

 

 

 

思い出した、これは大学の講義光景だ。
似てる。
仄暗い教室、教授の語り口は一本調子。眠かったなぁ。
今日は寝ないようにしなきゃ…。

ご着席後、西木政統さんによってスクリーンはプロフィールに切り替えられた。
が…?始まったようで始まらない自己紹介。話題は運慶展の展示作品について。

ベクトルは客席向きというよりもむしろ内輪。楽しかった思い出をお三方で
分かち合う会話調。回顧シーンから始まるドラマにも似て。
そこに混ぜて貰えたら楽しいんだろうなぁ…まるでおのろけ話。

その会話に仏像の画像を合わせて投影して差し上げようと慌て始める西木政統さん。
サービス精神が破綻にアクセル。
”用意していた順番と違うから画像がすぐには出てこない“と、操作の手が追いつかないことをぼやきます。
画像の解像度が高いせいで、クリックから表示までの数秒間がもどかしい。

画像表示待ちの無言時間、放送事故になる訳でもあるまいに、片桐仁さんが
動きます。
あの作品この作品、急かすようにねだるように、次から次へと矢継ぎ早、話題繰り出し追い討ちです。
会場に初めての笑いが起こります。辻明俊さんも乗っかり加速加速…。

 

 

 

国文学者・日本近世演劇研究者の鳥越文蔵さんが、わたしの通学した大学の
「映像・演劇」講義で仰いました。舞台や神の世界で、日本と西洋では入り口への過程が違うと。

片桐仁さんは舞台役者の顔をお持ちです。
トークイベントを生の舞台として無意識か意識的にか演出なさったとしても
おかしくありません。
鳥越文蔵先生によるとこうです。日常はウチで非日常はソトである。西洋では日常の隣に非日常が存在する。それゆえ教会が町なかにいきなり在る。舞台
なら帳が開き次第第一幕スタート。
対する日本では徐々に展開。神へのアクセスは鳥居に次ぐ鳥居をくぐり参道歩いてその先だ。能もそう。物語はいきなりは始まらない。能楽師が現れるまで前置きが長い。笛が鳴って太鼓が加わってクレッシェンドしなければ役者の
登場にありつけない。舞台の造りも、だ。
この緩やかな調和の手順には決まりごとがある。日本人はそんな予定調和に
安心して非日常へ身を委ねる。異世界へ畏怖の念はウチとソトの概念をそこへも設ける。


わたしの想像では博物館研究員とお寺の執事は純日本的で、神の領分にどっぷりと浸り古式ゆかしい予定調和の世界の住人です。

そのつもりで客席から眺める遠景に華やぐのろけばなし。惹かれて、一歩ソトから足を踏み入れようとした途端ギアチェンジに遭い、笑いを鍵に扉が開放
されてしまいました。

一瞬で距離感を失うこの幕開けこそ、その後の一時間半全体を表すプロローグに相応しく思えました。

 


これから何が始まるのだっけ?あてにしていたセオリーを崩されるのって、
あれ?…快感。寝てなんかいられないぞ。